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Artist:
Takeshi Shikama
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Title:
Silent Respiration of Forests
Specifications:
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Size:
Paper Size:
-Square 30 x 30"
-Rectangular 30 x 44" -
Edition:
5
イメージ12点 -
Price:
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Thumbnails:
私は、森のなにげないたたずまいに強く惹かれる。
森に呼びかけられているような、手招きされているような、不思議な感覚。森との交歓、とでもいえばいいのか。「森の襞-Silent Respiration of Forests」は、なにかそういうものによって撮り続けている写真だ。
その原点は、おそらく私が、国土の70%を山と森に囲まれた日本に暮らす、日本人だということにある。山の国・森の国の風土の中で、日本人は自然の恩恵を受け、それゆえ大切にし、敬う長い歴史と伝統を連綿と受け継いできた。とはいえ、現代、特に都市では、急激な高度成長の陰で自然と人との共生の連鎖は断たれて久しく、私自身、40年近く東京の中だけで生きていた頃は、森への親密感を抱くことなどなかった。が、その後10年間、自分の手で森の中に家を建てた経験によって、自然に対する意識が覚醒する。
時計が刻む音よりゆっくり流れる森の時間は心地よく、自らの身体を使った家造りを通して、私は結果的に先人たちの生き方を踏襲した。そうする間に、日本人としての遺伝子に潜んでいた自然への憧憬、感謝、畏怖の念が、魂の襞に刻み込まれていったのだと思う。
そして私は、写真に開眼した。
私にとって森の写真は、自然から与えられる大いなる恵みのひとつにほかならない。環境破壊の広がりが、私の写真を困難にしているのは確かで、1日10時間以上歩いても徒労に終わり、地図上にはあるはずの森がダムの工事現場だったこともある。しかし、そこで諦めなかったおかげで、森の巨人たちにも出会ってきた。たとえば、曲がっていて役に立たないという理由で、伐られる難を逃れて成長し続け、数百年生き続けている巨樹。そういう樹々が語りかけてくれる声に気持ちを集中させ、私は1度だけシャッターをきる。
一期一会の写真。私の写真は自然にそうなった。自分が撮っているのではなくて森に撮らせてもらっている写真。それが、自然へのレクイエムにならないことを祈りたい。
志鎌猛 『森の襞 - Silent Respiration of Forests』より
本シリーズは、志鎌猛が「これまでの原点」と話す代表作『森の襞 - Silent Respiration of Forests』をはじめ、『うつろい - Evanescence』、『Urban Forest』シリーズからセレクトした12点のイメージからなります。豊かな色調を誇るプラチナプリントからは、志鎌がライフワークとして撮影し続けてきた森の息遣いをも聞こえてきそうです。