「INTERIOR」と題する本シリーズは、石内が主に1980から90年代にかけて発表してきた『Club & Courts』や『YOKOSUKA Again』、あるいはボストンの美術館にふと置かれていた時代を帯びたソファーなど、さまざまなシリーズから石内自身が厳選したイメージ９点からなります。仄暗く誰もいない廃屋と化した室内にもかかわらず、かつてその場を行き交ったひとびとの気配であり、体温や息づかい、あるいは情念といったものが色濃く沁みつていいます。INTERIORとは、家具や室内であるばかりか、わたしたちの「内的空間」のことでもあるのでしょう。石内は、それまでの身体の傷跡や、母親や被爆者たちの遺品へと向かい合ってきたのと同様に、止まっていた時間にそっと寄り添いながら、そこに沈着している記憶を紡ぎあげています。美しくもはかない質感まで豊かな色調で表現したプラチナプリントは、その記憶の手触りまでも伝えることでしょう。