「女性の持つさまざまな心の綾というのでしょうか、それとも情念といいましょうか、
    そんなモノを、知らず知らずのうちに私は作品に蒔いていたのでした。
    女性の心のひだを視覚化すると、こんな辻褄の合わない光景になり、
    それが、そっとのぞいてみたいようなコラージュという作品になったのでしょうか。」 ---- 岡上淑子

「岡上淑子の表現と作品は、作家のものである以上に、
     同じ状態を生きる女性たちの所有物であるというべきなのではないだろうか。」----- 金子隆一（写真史家）

岡上がこれらのコラージュ作品を手がけたのは戦後間もない1950年代初頭のことでした。復興期とはいえ未だ物資は乏しかったものの、外国から目まぐるしく流入する文化は、20代を迎えたばかりの岡上にとっては、見るもの聞くものすべてが新鮮で魅力的に思え、胸をときめかすにいられませんでした。同時に、戦後の「自由」といった気運に後押しされ、岡上ばかりではなく、女性たちは解放され「自分たちの好きな色、好きな形の服が着れるように」なった時代でした。これらのコラージュはそのような時代背景から生まれてきたのです。その後、岡上の作品が脚光を浴びるようになるまで、半世紀もの時間を待たなければなりませんでした。今回、アマナサルトからリリースする６点は、もともと岡上自身が自宅で大切に保管していた100点あまりのコラージュ作品から作家本人が厳選しました。オリジナルコラージュの持つざらついた独特の色調が、精度が優れたプラチナプリントで焼いたことによって、繊細な風合いに仕上がり、岡上作品に新たな息吹をもたらしています。