荒木経惟の新作『左眼ノ恋』は、二十歳の頃に荒木自身が感銘を受けたエド・ファン・デル・エルスケンの伝説的な写真集『左岸の恋』（1956年）へのオマージュである。

この『左眼ノ恋』のシリーズは、一見した通り、左右に二つの違ったイメージが組まれている。左側のイメージが鮮明であるのに対して、右側のイメージはフォーカスが外れ、あるいは光のハレーションを捉えている。

これらのイメージは、2013年の秋頃から網膜中心動脈閉鎖症により右眼の視力を失いつつある荒木のヴィジョンをそのまま反映している。それとともに、二つのイメージの強いコントラストは、荒木の写真制作の真髄でもあるエロスとタナトスとして理解することができるであろう。

今回アマナサルトは、『左眼ノ恋』シリーズの中から、8組（16イメージ）を112×152センチとなる大型作品をプラチナ・パラディウム・プリントとして発表いたします。