PORTFOLIO / PRINTS

< BACK









  • Artist:

    Tadao Ando

  • Title:

    Ando Box VI

Specifications:

Thumbnails:

アマナサルトでは安藤忠雄のシリーズ第6弾として、安藤氏が手掛けた建築を自身で撮影した写真によるポートフォリオ集『ANDO BOX VI』を発表いたします。今回選んだ15枚の写真は、安藤氏が求める「建築の光」を自らの目で写したものであり、単なる建築写真や特定の建築作品の表層的な断片にとどまらず、安藤建築の普遍性を伝える写真群と言えます。 今回のポートフォリオ集はプリント技法としては最も永続性に優れたプラチナプリントで制作し、永く後世に伝えるべく刊行いたします。また、安藤氏の描いたオリジナル手書きドローイング3点と、直島のある地中美術館のコンセプト模型も含まれております。

 

 

建築の光

 

忘れ難い建築との出会いがある。その一つが二〇代後半、初めての世界旅行の際に訪れたル・コルビュジエのロンシャン礼拝堂だ。モダニズムの礎を築いた巨匠が、人生の最後に、その道程を否定するかのごとく、創り上げた奔放なコンクリートの造形。湾曲する壁の狭間から内部に足を踏み入れると、そこはありとあらゆる角度から、ありとあらゆる種類の〝光〟が差し込む混沌の空間だった。その衝撃は一日では受け止めきれるものでなく、翌日、翌々日と訪問を重ねた。三日目に、ミサの場面に遭遇、美しくも激しい光が降り注ぐ空間で、人々が肩を寄せ合い、一心に祈る情景を目にした。ただ光を追い求めるだけで、建築ができることを、私はこのとき知った。

 

人工物とは全て、いつかは風化して潰えるものだ。その宿命に抗い、永遠性を希求する人間の営為の一断面が、ギリシアに始まる建築の歴史なのかもしれないが――かなうならば私は、物質それ自体や形式ではなく、記憶として、人々の心の中に、永遠に生き続ける建築をつくりたい。

 

その理想に近づくべく、コンクリートによる〝裸形〟の空間を試みる。表層を覆う一切の装飾物を削ぎ落すことで無地のキャンバスのような〝余白〟が現れる。そこに自然の断片が映し出されたときに生まれる空気、生命感に、人間の魂に訴える力を期待する。その自然の断片の象徴が、光であり、それによって浮かび上がる影の表情だ。

 

その場所でしか出来ない、その建物だけが持つ光の空間。それを、いかなる骨格・構成をもって、いかなるヴォリューム、オリエンテーションの光をつくりだすか。こうして、ただ光を追い求める時間を今日まで過ごしてきた。手ですくい取りたくなるような量感の光。心深くにまでしみ込んでくるような、静かで柔らかな光。イメージずっと心にあるのだが、現実の仕事では、なかなかそこまで辿り着かない。試行錯誤を続けている。

 

安藤忠雄